ABAいしかわトピックス

2021年1月1日

北陸信越運輸局石川運輸支局 支局長 梁取 利男 新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。
石川県自動車車体整備協同組合並びに会員の皆様には、ご健勝にて新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
皆様には、平素から国土交通行政並びに当運輸支局の業務につきまして、格別なるご理解とご協力を頂いておりますことに厚く御礼申し上げます。
令和3年の新春を迎えるにあたり、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

現在我が国では、新型コロナウィルス感染症の拡大が社会経済や国民生活に甚大な影響を及ぼしており、とりわけ運輸・観光分野における影響は深刻で依然として収束が見通せない困難な状況に直面しています。
新型コロナウィルス感染症に関しては、昨年の「新型コロナウィルス感染症対策の基本的対処方針」において、「自家用車等の整備」が国民の生活基盤を維持するために不可欠なサービスとして位置づけられ、コロナ禍の中、献身的に責任を果たしていただいている自動車整備業に携わる皆様に、改めて敬意と感謝を申し上げます。

さて、(一社)日本自動車整備振興会連合会が発表した平成31年度自動車分解整備業実態調査によりますと、総整備売上高は約5.6兆円と前年度と比べると920億円増と3年連続で増加しておりますが、依然として経営環境は厳しいものがあります。
このような状況の中、自動運転技術など先進技術への対応、人材不足といった課題もありますが、自動車技術の進展に伴い、自動車整備事業の重要性はますます増加していると考えます。
国土交通行政に課された課題は山積みであり、北陸信越運輸局では安心・安全で活力のある地域とするため、地域の関係者と連携しながら様々な重要な施策に取り組んでいます。石川運輸支局としても、整備事業者の皆様に引き続き重要な役割を果たして頂くため、これらの課題を解決すべく、本年も関係者の皆様とともに積極的に取り組んでいく具体的課題、施策について以下により申し述べます。

一つ目は自動ブレーキなど、先進技術への対応です。交通事故の減少や地域公共交通の活性化などの課題解決に大きな効果を発揮するものとして、自動運転の実現に向けた環境整備、自動運転技術の開発・普及促進と実証実験が行われています。
今や、国産メーカーの製造する乗用車の約9割に自動ブレーキが搭載されており、これら先進技術を搭載した自動車について、ユーザーが安心して整備を依頼できる環境を整えるため、令和元年5月に「道路運送車両法の一部を改正する法律」が成立し国が定める安全基準の対象装置を追加、令和2年4月からはこれらの整備を行う際に認証取得を義務付ける特定整備制度を施行しております。これらの先進技術が確実に機能を発揮するためには、今まで以上に予防的な点検整備並びに適切な修理、整備が求められることは言うまでもありません。
とりわけ車体整備においては、このような先進技術に関連した各種センサーの取り外し、取り付けに当たってスキャンツールを使用することが必須となることが増えるとともに、超高張力鋼板等の新素材への対応も求められ、整備作業を行うより高度な知識・技術の習得とともに、最新の整備機器の導入が必要不可欠となっており、業界全体が大きな転換期を迎えているところです。
国土交通省では、平成25 年度から汎用型スキャンツールの導入補助を実施する等、出来るだけ多くの皆様に先進技術を搭載した自動車の整備に携わって頂きたいと考えており、これらの取り組みを総合的に講ずることにより、制度の円滑な施行を進めるとともに自動車整備工場の技術力向上を支援してまいります。
また、中小企業等経営強化法に基づき、整備事業者で利用しやすい経営指標を規定した事業分野別指針が策定され、本指針に基づき経営力向上計画を策定し認定を受けると、法人税や所得税の特別控除や金融支援が受けられますので、本制度をはじめとした各種支援策を有効に活用していただきたいと思います。
その他、本年10月以降の新型車については、令和6年10月以降の継続検査においてOBD検査の判定を必須とする予定です。このため、本年10月以降、情報の管理に必要な手数料を自動車技術総合機構に納めることとし、現在、手数料の徴収システムの構築、判定に必要となるアプリケーションソフトの開発等の準備を進めております。
二つ目は自動車の点検整備の実施にかかる対応です。自動車の不具合による事故の防止や環境保全を図るため、自動車ユーザーは自動車の点検・整備が義務付けられていますが、その実施状況は乗用車で6割程度にとどまるなど、決して十分に実施されているとはいえない状況です。このため、昨年4月より、点検・整備を車検後に行うこととして受検した自動車の検査標章裏面余白には「法定点検未実施(車検時)」を表示することにより、点検・整備の実施をするように告知しています。加えて、大型車の車輪脱落事故発生件数については、4年連続で増加しており、令和元年度の全国の発生件数は112件と平成11年度からの統計上最大の件数となっている状況を踏まえ、昨年11月のとりまとめの決定を受けて、関係団体の皆様とともに「令和2年度緊急対策」の早期かつ確実な実施に取り組んでいます。
また、独立行政法人自動車技術総合機構と連携し、警察や自動車関係団体等の協力を得ながら街頭検査を行い、不正改造車等の排除に努めるとともに、車検切れ車両による運行は安全上の問題があるほか、自賠責保険が切れている可能性も高いことから、「ナンバー自動読取装置」を導入した車検切れ運行車両対策にも取り組んでいます。
このような中で、自動車ユーザーとの信頼を築き、自動車のよきアドバイザーとして保守管理の重要性を伝えていただくことの意味は益々大きくなっています。
本年も点検整備推進運動等を通じてユーザーの保守管理意識の向上を図ることしておりますので、より一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

三つ目は自動車整備業界における大きな課題である人材不足への対応です。近年の少子高齢化や若者のクルマ離れ等により、自動車整備士養成施設の学生数が減少しており、厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、自動車整備要員の有効求人倍率は、平成23年度の1.07から令和元年度には4.77に達しています。
このことから、自動車整備の仕事について高校生の理解向上を図り、就職する若者を確保するため、関係団体等と連携して県内の高等学校を直接訪問し、自動車整備の仕事の社会的重要性・将来性について説明を行い、進路指導の際に整備の仕事を選択肢として紹介していただけるよう取り組みを進めているところです。整備人材の不足は、先に述べさせていただいた特定整備制度の開始に伴い、その重要性を増している整備事業の基盤を揺るがすものであり、早急に効果的な対策を講じる必要があることから、今年もこうした取り組みを展開してまいります。

タカタ製エアバッグに係るリコールについては、平成30年5月より未改修車を車検で通さない措置を行う等の改修促進の取り組みを行っており、昨年5月より対象範囲を順次拡大したところです。整備事業者の皆様にご理解とご協力をいただき改修が進んでいることに心から感謝申し上げます。
皆様におかれましては、本制度の趣旨をご理解いただき、ユーザーの皆様の安全を確保するため引き続きご協力をお願い申し上げます。

自動車整備事業場の環境対策への取り組みとしましては、昨年の「環境に優しい自動車整備事業場等の表彰」については、2事業場が北陸信越運輸局長表彰、1事業場が当運輸支局長表彰を受賞されるなど、企業としての社会的責任を果たして頂いていることに敬意を表すとともに、感謝申し上げます。
今後も貴会を中心に弛まぬご努力を続けていかれますようご期待申し上げます。

以上、新しい年の展望と、課題への取り組みの一端について述べさせて頂きました。
本年も石川運輸支局といたしましては、皆様のご理解とご協力を頂きながら、ユーザーによる自動車の適切な保守管理を推進し、安全で快適な「くるま社会」の形成と自動車整備業界の健全な発展に向けて努力して参る所存でございます。
結びにあたり、石川県自動車車体整備協同組合並びに会員各位の益々のご繁栄とご健勝を祈念申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
本年も、どうぞよろしくお願いします。